威嚇

文章を書く練習

ブエノスアイレス

去年10月の感想の転記。

 

ウィンの行動はすべてファイを試してるように見えて愛おしかった。可愛いおろかものですね。どこまでやっても自分を見離さないのかを試してるね。愛着障害なのかな。

ウィンは俺のパスポート返せよ!って言いながらも、ファイが持ってる間はウィンをこの国に残して帰国することはない(そこまで薄情じゃない)ことを知ってたから甘えてたんだと思う。机の上にパスポートが残されたチャンの部屋を片付けて待っていて、ファイが自分を見限って帰ってこないことを悟って彼の毛布を抱いて泣きじゃくるウィンは子供みたいに見えた。タバコを片付けて、床を掃除してるところのウィンが本当に可愛い。またやり直せると思ってたよね。たくさん買ってきてくれたタバコを、一緒に吸おうと思ってたよね。

だって許してもらおうと思ってウィンなりに歩み寄って(セックスしか方法を知らないから)持ち込もうとしたのに頑なに拒まれて、離れてる間に何人とヤったのか教えろだなんて、そりゃ〜喧嘩にもなるし寂しさを埋めてくれないなら夜中に外にも出るよね。本当はただ外に出て散歩してるだけだったかもしれないね。おめかししてバーに行って声掛けられることで、自分の魅力がまだあることを確認してたのかもしれないね。ファイは相手にしてくれないから自分が衰えたのかもしれないってこわかったよね。

ファイの方もウィンが大怪我をしてどこにも行けないことを喜んでたから似たもの同士だね。ウィンが大怪我をして1人で何もできない、両手が使えないから食事もトイレも介護が必要だったでしょう、心から安らげる瞬間だったかもしれないけどウィンの自尊心は削れていくね。そうそう、ここで余計に「トイレの世話までした俺に欲情することはないのかも」って思ったかも。

ファイは仕事があるから外にいて他にも世界があるけど、ウィンは世界がなかったから

ウィンの手を折った男を瓶で殴ってクビになったことをウィンには言わないあたり好きです。でもこの言わなさが全てを拗らせたんだよなコイツ

爽やかで健やかな青年、親に居場所を知らせていない子、に出会うことで自分を客観視することができて次に進む決心をしたけど
あの時も書き置きのひとつくらい部屋に残しておけば…って思うわな
お前はとにかく言葉が足りない

会いたいと思えば必ず会える、ってそれウィンに言ってあげろ パスポートはあるけどお金多分なくて好きな男に置いてかれた哀しみに打ちひしがれてるウィンに!

2人の関係はじゅくじゅくに熟れて腐り切って落ちる前の果物みたいなもんだけど、濃厚な芳香を放つ良さもある。

ウィンよりもファイの方がヤバい男だよ〜

 

everything everywhere all at once

everything everywhere all at onceを観た。

 

できれば音響のいい映画館で見てほしい〜
私はドルビーアトモスで見た!

まず第一印象は「こんな映画初めて見たわ」(絵の作り方)

 

マルチバースを用いて「こうだったかもしれない自分」たちに触れつつ、「君がこれ以上ないワーストだったからこそ逆に君がこのユニバースで闘えるんだ」っていうアルファ夫のセリフはかなり彼女を突き動かす原動力になったなぁと思う

このマルチバース形式を思い返すと、この3年間を考える

 

空気感染するウィルスのパンデミックというとてつもなく大きな流れの中で、逆説的にかなり意識的に自分で人生を選びとっている感覚がある3年間だったと思う。

ワクチンを打つのか、打たないのか、対面で仕事をするのか、しないのか、友達と会うのか、恋人だけならいいのか、外に出ることすら自粛するのか、しないのか。個人的には祖母が外出自粛のせいで認知症になってしまい、ご飯が食べられなくなり、フラジャイルになり最後にはコロナに感染して亡くなってしまったことを考えた。

その時々でベストな行動をしているつもりだったけど、後から振り返れば、外に出かけるのが大好きなで彼女の気持ちに寄り添った十分なサポートもせず「大事だから閉じ込めておけばよい」というのも違ったんだろうという結論に至ってしまう。亡くなってから1年半ずっと考えている。多分死ぬまで後悔する。

私だけじゃなくてこういう経験を持つひと、本当に今多いと思う。

そういった時代で、このようにあのとき選び取らなかった未来たちから能力だけ借りてきて、未知で無数の選択肢を操る自分の娘と対峙するーーーーっていう話を映画化する。今がベストだったと思う。

あり得た世界、選ばなかった自分、それでもだからこそやれることがある、っていうのは救いです。


春節のお祝いで赤い服がなかったのか、背中に「パンク」と書かれたニットカーディガンを羽織ってるのがジョイちゃんを抱きしめるときにも見えててとっても良かった
「赤い服!あった!」ってパッと手に取って後ろも見ずに買っちゃったんだろうな〜ってのが伝わる。
マルチタスクに追われてる人あるある


ジョイちゃんの七変化も全部可愛い〜

どの世界線でも夫は優しく忍耐強いひとだし、お父さんは娘への過剰な期待と勝手なガッカリを持ってて、全員本質は変わらないのが見えてよかった これは絶望でも希望でもある

上映中ずっと気になってた「娘からお母さんへの名前呼び」が最後の最後で回収されて良かったーーー

ゲイと親との関係を描いた作品は父と息子だと結構思いつくものがあるけど、母と娘だと数が少ないのでその点でも素晴らしい

監督がこちらの作品を作るにあたって、当初主人公をADHDの設定にしていたことから本などを読み込んで勉強したら、これって自分じゃない…?と気付いて診断がついたエピソードがすごく好き